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ザカリーヤー・ターミル『酸っぱいブドウ/はりねずみ』(白水社) [海外小説]

シリア出身の作家による、短篇集と連作集の二作が収録された作品集です。それぞれにつながりはなく、雰囲気はだいぶ違うのでどちらからでも読めます。
「酸っぱいブドウ」は全部で五十九もの短いお話が入っていて、いずれもショートショートと呼んでもよさそうな長さです。場合によっては一ページもしないうちに終わってしまいますからね。
タイトルからしてあまり楽しい内容ではなさそうだと思っていただけそうですけれども、じっさいにどこを切っても不条理で後味が悪い話が続々と出てきます。登場人物たちが理不尽な災難に見舞われる短篇が、ほんとうに五十点以上出てくるんですよ。
特筆すべきはこれが超自然的な何かではなく同じ人間によるものだということで、突然の見知らぬ誰かの悪意であったり、不可思議な力のように描かれる(ここだけ見るとファンタジーみたいな、大変わかりやすい寓意を伴った)体制側の何ものかであったりして、とにかく主人公がひどい目に遭います。たまにはそんなにひどくない話もあるよ、というのはあんまり慰めになりませんね。短いからあっという間に終わってしまうのですが、読み進めても読み進めてもシニカルで奇妙で理不尽な話が続きます。
「はりねずみ」はがらりと雰囲気が変わり、シリアに暮らす少年の目を通した日常が描かれています。大人から見るとよくわからない子どもの理屈が楽しいのですが、気楽に読んでいてもそこここに現代シリアの不穏な空気がにじみ出しています。

酸っぱいブドウ/はりねずみ (エクス・リブリス)


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