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フローベール『三つの物語』(光文社古典新訳文庫) [海外小説]

『ボヴァリー夫人』『感情教育』など、もっぱら長篇小説で名高いフローベールの短編集です。タイトルのとおり三つ入って文庫本で厚さ1センチ程度ですよ。しかも解説がなかなかぶ厚いので、だいたい短篇三つ+解説一つで1センチです。これならさいごまで読めます。しかも執筆当時のフランス社会に関する知識が(あまり)なくても問題なく楽しめるんです。
それなりに波乱はあるけれども語り継がれるほど非凡ではなかったある召使いの生涯を描く「素朴なひと」、聖者伝説に材をとった「聖ジュリアン伝」、オスカー・ワイルドでもおなじみサロメのエピソードを少し変わった角度から描く「へロディアス」の三本立てです。
ひとつひとつ味わいが違うので、全然別の本をを三冊読んだような気持ちになれて大変お得です。ひとつ読み終えて次のに取りかかって、がらりと空気が変わっていてびっくりするのを二回やりましたからね。全体的にどうということもない無名の人物の生涯も、出生とともに予言されたとおりの数奇な運命をたどる子どもの物語も、聖書の中でわずかに触れられるできごとから膨らませたどたばたも、みんな違ってみんな面白いので、読み終えてからそのことにびっくりしていただきたい一冊です。そんなの興味ないし……と思っていた作品まで全部面白かったんですよ。
ぶ厚い解説では、三つの短篇を通しての読み方も提示されています。翻訳家さんの視点が興味深いので、作品本体のみならずこちらも必読ですよ。

三つの物語 (光文社古典新訳文庫)


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