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E・H・ヴィシャック『メドゥーサ』(アトリエサード) [幻想文学]

海のうえで生まれ育ち、両親を失い、寄宿学校からも脱走した少年は、ふとした縁から船主の男性と知り合い、彼とともに海へ旅立つことに。順風満帆の航海はしかし、しだいに不穏な様相を帯び始め……
主人公の周囲をうろつく正体不明の怪物ですとか、海賊に捕らわれた息子を探す船主とか、なぜか彼と折り合いが良くない船長とか、海賊船にただひとり残された謎の人物とか、いろいろ出てくる海洋冒険小説みたいなお話です。身寄りのない少年が船に乗せてもらう序盤は『宝島』や19世紀の小説っぽいんですけれども、中盤を過ぎたあたりからどんどん異様になってきて、最終的にはなんだかよくわからないうちに終わります。
海洋小説のようでもあり怪奇小説のようでもあり、海と船旅の描写もあり、哲学的な話も出てきてものすごく面白かったんですけれども、人にすすめたら良識を疑われるんじゃないかと思いますね。あまりにも謎を投げっぱなしにしていて、いやでもこれはちゃんと読んだら全部解決しているのではないかという気もして、ほんとうにもうびっくりするようなへんな小説です。荒削りとかいうのではなくてただただヘンテコです。
巻末には著者による評論「恐怖小説の意義」があわせて収録されていて、ミルトンからポー、ド・クインシーにコンラッドまでいろんな作品が具体例としてあげられています。こちらも興味深いのでぜひいっしょにお楽しみ下さい。ものすごくわたくしと趣味が合う感じだったので、個人的に大変面白かったのが腑に落ちました。
わたくしが今まで読んだなかで近いと思うのは「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」ですかね。展開は全然似てないんですけれども、海に出ているのにふつうの海洋小説じゃない部分が強烈で、謎が放り出されて終わるところは似ていると思うんですよ。他の方の意見が聞きたいのでぜひ皆さん両方読んで下さい。『メドゥーサ』のほうはちゃんと完結しているし、そんなに長くないので読みやすいです。

メドゥーサ (ナイトランド叢書3-5)

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